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生活保護の思い出 3

生活保護法
第四条 保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。
2 民法(明治二十九年法律第八十九号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。
3 前二項の規定は、急迫した事由がある場合に、必要な保護を行うことを妨げるものではない。



生活保護の申請者、受給者に大きな影響を与えているだけでなく、役所の現場の生活保護担当の業務を大変にしている根本はこの生活保護法第四条だと思います。

よく生活保護の相談に役所へ行ったけど、申請させてもらえなかったという噂話を聞いたことがありませんか?それは本当です。役所側としてはなるべく申請してほしくありません。申請すると現金や預貯金等がある場合を除き、ほぼ生活保護受給を「法令上」開始せざるを得ないからです。

健康で働けると生活保護受けられないって思うかもしれないが、第四条3項を見ればわかるとおりお金がなかったらそれだけで生活保護を受けられます。

役所側はそのことは言わず、まずはハローワークに行くようになどと申請させないようにするケースが多いです。なぜでしょうか?

役所側が生活保護受給者を増やしたくないのは財政が厳しいからというのがその一つであることもありえますが、主な理由ではないです。

例えば予算がなくて道路の補修が進まなかったり、特定の事業ができないのはしょうがないことですが、法令の条件に該当しているのに生活保護を適用しなかったら違法です。財政上を理由に生活保護を受けさせないということはできないので、当然ながら役所の方針として生活保護受給者は何人以内に抑えるなんてできようがないのです。

また細かいことですが、生活保護の予算について地方自治体の負担は1/4で、残り3/4は国が支出してくれるので、現場の自治体に予算的な厳しさはそこまでありません。


現場の担当者が生活保護受給者を増やしたくない理由は「継続的に面倒な人を相手にする機会が増える」からです。

前回の記事で書いたとおり、生活保護担当者は生活保護受給者の自宅を定期的に訪問しなければなりません。他の条文も関係ありますが、根本はこの生活保護法第四条に該当する事項、たとえば突発的な収入が発生してないかを調査するためや、就労能力がある受給者はそれを活用するよう指導しないといけないためなどの理由で訪問するのです。

働かなくてもお金がもらえるならできるだけ働きたくないと考えてしまうのが多くの人間の正直な気持ちでしょうし、突発的な収入があると支給額が減らされてしまうなら申告したくないでしょう。これらの調査や指導は受給者のもらえる支給額の増減に影響するため、トラブルが頻繁に生じるのです。自動車も基本は処分してもらうのでそれも揉める大きな要因でした。




税金徴収の仕事も同じようにトラブルは生じやすいと思いますが、税金は基本一定額の収入があった人や払える人にしか発生しません。また世間的にも税金を払わない人が悪いという見方が一般的で、役所が強制的に執行しても世間から批判はほとんどされません。

しかしながら生活保護に伴う支給額のトラブルは減額される理由が正当にある場合でも、受給者は経済的弱者と世間的にも同情されやすい立場で、受給者本人もそれをある意味利用して訴えてくる人もあり、役所が強制的に執行するのが躊躇されやすいのです。もともと生活保護に関して法令的にも強制執行は要件が厳しい上、特に役所の管理職は世間体を非常に意識して弱気な判断をしがちです。結果的に、担当者が粘り強く受給者と話し、説得し、指導して解決するという方針となることが多く、とても面倒な仕事となります。



相手にするのはいろいろ問題を抱えている人が多いので、やりとりするのも大変です。意思疎通が図れないような人も多いです。アルコール依存症の人にはお酒を控え、治療して働けるように指導しないといけません。刑務所から出所した人やアウトローな人などは恫喝したりする人もいます。

私は年に1回程度くらいの頻度で身の危険を感じるような事件に遭遇しましたが、田舎だったのでまだ少ないほうかもしれません。一番怖かったのはヤクザ案件で、かなり脅されました。


他の制度による保障が利用できる場合は生活保護より他の制度が優先なので手続きするように本人を指導しますが、まともに手続きができないような人も多いです。結局本人に同意書をもらい、私が年金手続きに行ったこともあります。そのとき古い厚生年金の履歴は同一人物に名寄せされていない、つまり例えばAさんがBやCやDの会社で勤務して厚生年金を払ってきたという履歴がAさんというユニークな情報に紐づいていないので、本人からあやふやな会社勤務履歴の記憶を聴取し、社会保険事務所で該当する厚生年金がないか一つ一つ確認していくという困難を体験しました。これがあとに報道されるいわゆる消えた年金問題で、そりゃ支給漏れはかなり生じるよなって感じでした。


また生活保護と直接関係なくても生活保護受給者ではさまざまなトラブルなどを起こしている人が多く、生活保護を受けているからということでその調整や指導に生活保護担当が関与させられることも多いです。親類やご近所トラブル、介護機関や医療機関とのトラブル、学校、警察、消防などなど…。なんかもう書ききれないほどあります。

生活保護受給者は親類や近所付き合いがない人も多いので、孤独死に立ち会うこともよくあります。普通は異常な腐敗臭→近所の人が警察消防に通報→生活保護担当に連絡という経路です。親類がいない、もしくは疎遠な場合は火葬手続きも行います。


続きます

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